熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そうなったら、せっかく約束したけれど、私は先にオフィスに向かわなければ。
オフィスに着いた後の段取りを頭の中で考え、ちょっと気を引き締めながら、二階に続く螺旋状の階段を上がる。


一番奥のドアが優月の寝室。
その手前の両開きのドアが書斎なのは、私ももちろん知っている。


まずは書斎のドアをノックした。
けれど二回ドアを叩いても返事はなく、シーンと静まり返るだけ。
私は首を傾げてから、そっとドアを開けた。


窓から射し込む秋の朝陽は、柔らかくて弱い。
その為、部屋全体を照らし出せていない。
書斎は全体的に薄暗く、もちろんそこに優月の姿もなかった。
その様子を確認して初めて、『社長のくせに、まさかの寝坊!?』と考えた。


いや、社長だからって、絶対寝坊しちゃいけないわけじゃない。
だけど、今朝一緒に行こうと言ったのは優月の方だ。
元許嫁とは言え、恋人同士になって初めての約束だ。


私の方は、それを意識してちょっと緊張しながらウキウキしてたのに……。
いきなり寝坊とか。
今更の関係でも、ちょっと緩み過ぎじゃない?


――と、少しだけ不満を覚えながら、私は書斎を出て奥の寝室に向かった。
けれど本当に寝ているのか、ノックをしても反応はない。
私は優月の返事は待たずに、寝室のドアを開けた。
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