熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月の寝室は、本当に寝る為だけの空間。
広い部屋の真ん中で、圧倒的な存在感を誇っているキングサイズのベッドの上で、人型に膨らんでいる布団を見て、私は『やっぱり』とガックリした。


預かってきた朝食のトレーを窓際の小さな丸テーブルに置いて、私は溜め息をつきながらベッドに近寄った。


十月も半ばを過ぎ、明け方はだいぶ冷え込むようになった。
そのせいか、優月はベッドの真ん中でまるで蓑虫みたいに布団にくるまり、身体を丸くしてスヤスヤと眠っていた。


寝乱れた焦げ茶色の髪と、天使みたいに綺麗な寝顔が見えなかったら、優月かどうか判断できないくらい。
いつも姿勢良く堂々とした居佇まいの優月からは想像つかない、小さくコンパクトな寝姿に、ドキッとするより笑ってしまった。
せっかく広いベッドの大半が、無駄なスペースになっている。


「もう」


仕方ないなあ、とばかり、私はベッドの端に膝をついて乗り上げた。
ベッドサイドからでは、優月の身体に手が届かないからだ。


この上質な羽布団の中は、きっと温かくてぬくぬくだろう。
それを引っ剥がすのはちょっと可哀想だけど、社長に寝坊で遅刻されたら堪ったもんじゃない。
私は心を鬼にして、優月の布団を『えいっ』と勢い良く剥ぎ取った。
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