熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「大丈夫だよ、聞いてない。なあ? 佐藤さん」

「はい、優月様」


聞こえてくるのは、ちょっと笑い交じりの即答。


「聞いてるじゃない……!!」

「聞き流してくれてるから、心配するな。それより綾乃。大事なとこはぐらかすなよ」


優月は真面目な顔してそう言って、胸の前で腕組みをした。
その姿勢から、ちろりと私に横目を向けてくる。


「綾乃が随分とあっさり言った『初めて』って。俺とお前、二人とも素っ裸になってすることは、含まれてないのか?」

「っ!!」


更に強烈な一言を畳みかけられ、私は一瞬呼吸の仕方も忘れた。
変な音を立てて吸い込んだっきり、私は息を止めてしまう。
私の反応を最初から最後まで観察していた優月が、とても深い溜め息をついた。


「それとも何? そこはすっ飛ばすつもりか?」


探るように訊ねかけられ、私は『もう相手にしない』という意志表示のつもりで、無言のまま、再び勢い良く優月に背を向けた。
そのままシートに身を預け、さっきの優月と同じように、コンパクトに身体を縮込める。
続いてかけられる言葉も、シャットアウトしたつもりだ。


「……しばらくは、教える機会も来なそうだな」
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