熱情求婚～御曹司の庇護欲がとまらない～
優月は私の頭に手を乗せたまま、目を伏せて大きな息を吐いた。


「俺と綾乃のスタート地点は違う。急かさないけど、俺が想う半分でいいから、綾乃も俺も好きになって」


優月はそう言って、私を覗き込むように背を屈め、真っすぐ正面から瞳で射貫く。


「俺はちゃんと綾乃のこと好きだから。ゆっくりでいい。ついて来て」


私の瞳の中で、優月の瞳の奥の光が、どこか切なげに揺れた。
彼が私に向けた『好き』という言葉に、いつもと違うニュアンスを感じて、私の胸がドクッと大きく拍動する。


「っ……ごめん、なさいっ……」


バクバクと爆音を立てて高鳴る胸が苦しい。
たった今、反射的にキスを拒んでしまった自分がどうしようもなくもどかしくて、激しい自己嫌悪に陥る。


「嫌じゃない。そうじゃないの。そうじゃなくて、私っ……！」

「いいよ、綾乃。わかってる」


優月は頭から手を引きながら、一歩後退した。


「もう十分待ったんだ。いくらでも待てる。……ただ」


優月はそう言って、まるで挑むような目をして小首を傾げる。


「俺も、俺のペースで綾乃への『好き』を恋にする。もっと強く、もっと確かな物に」

「え……？」


彼はそう口にしながら、どこか不適な笑みを口角に浮かべた。
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