熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
私が無言でいるのを見て、彼女は意外そうに首を傾げた。


「知ってたの? ユヅキの女遊びのこと」

「……マリーさんも、その一人ですよね?」


警戒していたおかげで、一瞬眩暈がしそうになるのをやり過ごすことができた。
強気で畳みかけると、マリーさんが一瞬きょとんとして目を丸くした。


「私?」

「誤魔化さないでください。さっき……優月に『久しぶりに』って誘ってたじゃないですか」


ムキになって言い募ると、マリーさんは記憶を辿るように目線を宙に彷徨わせてから、「ああ!」とポンと手を打った。


「なんだ。アヤノ、英語わかるのね」

「話すのは苦手ですけど、聞き取るくらいなら、なんとか」

「そう……じゃあ話は早いわ」


マリーさんはそう言って、私の方に身体の正面を向けた。
胸を張って突き出され、一瞬私の方が怯んでしまう。


「アヤノ、ユヅキがどういう人間か、わかってる? 三十二歳。一般的には、そろそろ腰を落ち着ける時期。当然、恋愛願望も薄れてくる頃よ」


私は眉を寄せながら、マリーさんに向き合った。
彼女の前に立つと、どこまでも私は貧弱だけど、気持ちで怯むわけにはいかない。


「ホヅミを背負って立つ人間としても、優月は『結婚』しなきゃいけない年齢なのよ。だから、この数年で、遊びの恋人を清算してた。……私も含めてね」
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