熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「介助人がいないと厳しいでしょう。マリーのチケットはキャンセルの手続きをさせます。帰国便のフライトは週明けにでも……マリーの状況を見てこちらで手配します。……すまない、スティーブ」


優月のキビキビした謝罪に、マリーさんが「そうね」と相槌を打った。


「このまま乗ったら、飛行機の中で座りっ放しだわ。窮屈だし、勘弁して」


彼女がボスに言い捨てるのを聞いてから、私はおずおずと頭を上げた。


パーティーは既にお開きになっていた。
私の前で帰国便の相談をする二人は、パーティー会場でマリーさんの怪我の報告を聞いて、事故や怪我の程度もわからないまま医務室に駆け込んできたばかり。
ドクターの診断を聞いて、大怪我ではないことにホッと胸を撫で下ろした後、プレジデントのスティーブさんが気にするのは、やっぱり仕事のことだ。


「そうするしかないな。……仕方ない。私だけ先に帰国させてもらおう。マリーのことは君に任せていいか? ユヅキ」


そう言った時には、既に帰国便の時間を気にして、スティーブさんは左手首につけた腕時計に目を落としていた。
優月が「もちろん」と答えるのを聞いて、マリーさんに声をかける。
二人が一言二言仕事を話題にして会話をするのが、私の耳にも届いた。
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