熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「っつーかお前、社内恋愛するつもりか?」


優月はそう言いながら、どこか呆れたような視線をチラリと私に向けてくる。


「他にどこでしろって言うの」


私は胸を反らしながら言いのけた。
途端に、優月は私に背を向けたまま、深い溜め息をついた。


「……何が大空だ。結局、世界狭いままじゃないか」

「なによ?」


優月の嫌味をしっかり拾って聞き返すと、彼は「いや」と言葉を濁す。


「ま……。社内の方が安心か。『元』とは言え社長の許嫁だったお前に、本気で手出せる男がいるわけない」

「そんなの、わからないじゃない」


優月の断定的な言い方に、私はムッとして言い返す。
彼は「はいはい」と受け流すような言い方をして、肩を竦めた。


「わかったよ。気が済むまでやってみろ。で? いつまでだ?」

「は?」

「だから、婚約解消期間。どのくらい必要なんだ?」


優月は、聞き返されたことが理解不能というように、私を肩越しに見下ろす。
私には、そんな彼の質問の意味がわからない。


「何言ってるの? 無期限に決まってるでしょう? 解消なんだから」

「えっ……」


首を傾げながらそう言った私に、優月がギョッとしたように目を剥いた。
そんな優月に不可解な気分になりながら、私はハッとして左手首の腕時計に視線を落とす。
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