熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そんな中、間を隔てるように立っていた優月がいなくなり、私はマリーさんと真正面から向き合ってしまう。
診察台の上で膝を曲げて三角の形で座ったマリーさんが、私に上目遣いの視線を向けた。


「そういうことだから、私の怪我のことはそこまで心配しなくていいわよ、アヤノ」


口角を上げて挑むように言われ、私はゴクッと喉を鳴らすだけで、何も言い返せなかった。
私とマリーさんから少し離れた場所から、優月の低い話し声が断片的に聞こえてくる
最後に「よろしく」と言っていたから、マリーさんの部屋の準備の指示は無事に終わったのだろう。


彼は『ふうっ』と肩で息をしてから、私たちの方に向き合った。
マリーさんには一言、「OK」とだけ告げて、私にチラッと視線を向け、軽く手招きをする。


私はマリーさんの視線を気にしながら目を伏せ、優月の隣に小走りで近寄った。
優月は、自分の目の前で足を止め俯く私を見下ろしてから、一度マリーさんをチラッと見遣る。


「綾乃、どうしてこんなことになったんだ?」


優月は私をマリーさんから隠すように、私の肩を軽く引いた。
自分は私と彼女の間に、割り込むように身をずらす。


「……ごめんなさい」


私は肩も首も縮めて、顔を伏せたまま謝罪を繰り返す。
< 160 / 255 >

この作品をシェア

pagetop