熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「どうせこのニ、三日だ。俺がこっちで過ごせば、マリーの要求に沿うことはできるだろ……」

「ダメ~っ!!」


優月が腰に手を当ててマリーさんにそう言っている途中で、私は叫んでいた。
それで初めて、二人は私が入室したことに気付いたようだ。


二人同時に、『え?』というような視線を向けてくる。
散々泣いた後でグチャグチャの私の顔を見て、優月がギョッとしたように目を見開いた。


「綾乃!?」

「ご、ごめんなさい。ノックし忘れた……」

「いや、別にいいけど。荷物ならちゃんと届けてもらった。どうしてお前まで来たんだ?」


突然の私の乱入にちょっと驚いた顔をして、優月が私の方に歩み寄ってきた。
その向こうで、診察台の上にいた時と同じように、マリーさんが膝を抱えて座っている。
優月と違って、私に向ける視線は不機嫌そのものだ。


「ほんとよ、アヤノ。何しに来たの? 『ダメ』って何よ?」


『邪魔よ』と言うように、ハッと浅い息を吐くマリーさんに、私は一瞬尻込みしそうになる。
けれど、私を自分の背の後ろにやって、さっきと同じように庇おうとしてくれる優月を押しのける。
私は、マリーさんのベッドの横まで歩を進めた。
< 175 / 255 >

この作品をシェア

pagetop