熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
それだけのことなのに、私はほんのちょっと怯んだ。


「おはようございます。……あの、マリーさん……」

「話はなんとなく聞いたわ。私とアヤノのやり取りを見ていた誰かが、週刊誌にネタを売ったみたいね」

「っ……え?」


私よりずっと、マリーさんの方が今の事態に詳しいようだ。
目を丸くして思わず聞き返すと、彼女は私から目を逸らし顎を摩って逡巡した。


「確かに……芸能人じゃないけど、優月は穂積グループの御曹司だもの。女絡みのスキャンダルは、格好のネタよね……私も油断したわ。ごめんなさい、アヤノ」


軽く親指の爪を噛みながらサラッと謝罪をされ、私の方が素で驚いた。
きょときょとと瞬きをしている私に、マリーさんは苛立つような視線を向けてくる。


「わかってないの? あなたたち、婚約解消したってプレス発表してないでしょ? その状況で、婚約者のアヤノと、ホヅミの遠縁の私が言い合いながら取っ組み合いしてたのよ。騒がれるのはユヅキの方だわ」

「っ、あ……!」

「ゲラ、入手できたわ。見て御覧なさい」


話を聞いてから、夜中ずっと詳細な情報を集めていたのか、マリーさんは私にタブレット端末を突きつけてきた。
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