熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
確かに私も、『婚約者を寝取られるまで気付かない、呑気な旧華族令嬢』と揶揄するような書かれ方をしている。
だけど記事全体を通して、バトルを繰り広げた女二人は被害者で、あくまでも加害者は性に奔放な御曹司という意味合いが強い。


こんな記事が世間に出回ったら、優月だけじゃなく穂積グループにとってもイメージダウンだ。
少なからず、グループ全体にも悪影響になることは間違いない。


「あ、でも」


社会のウジ虫に対して、怒りを露わに暴言を撒き散らすマリーさんに、私は顔を上げて声をかけた。


「真実を言えばいいんじゃないでしょうか。未発表だっただけで、私と優月の婚約は解消しているんだし。『二股』って捉え方されずに済めば……」

「バカね、アヤノ。事が露見した後で、男の口から発表したって誰も相手にしないわよ。発刊差し止めができないようなら、今優月にできるのは、これ以上のイメージダウンを回避すること。……潔く不貞を認めて謝罪する態度を見せるくらいしか方法がないわ」


マリーさんは、私の浅い考えに呆れたように、腕組みをして大きな溜め息をついた。
それを聞いて、私は両手でタブレットを握り締めた。
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