熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「おはようございます。お騒がせして、本当に申し訳ございません」
謝罪の言葉を述べてから、ゆっくりと顔を上げる。
広報部長が、やれやれと言った様子で「越川さん」と私を呼んだ。
「どうなってるんだ? 君は穂積社長と婚約を解消したんじゃなかったのか?」
「え?」
私は短く聞き返しながら、社長室のドアをしっかりと閉め、中に一歩踏み出して足を止めた。
「週刊誌の発刊は差し止めできなくてね。午前十時にマスコミ各社に向けて、穂積社長のコメントをFAX送信することになった。その草稿を練っているところなんだが……」
秘書室課長がそう言いながらソファから立ち上がり、私の方に歩み寄ってきた。
A4サイズの紙を一枚ヒラッと差し出されたから、黙って受け取る。
草稿はまだしっかりと文章が固まっていないようで、ところどころ手書きの赤字が入っている状態だ。
けれど、大枠の意味はそれだけでもわかる。
「これを機に、婚約を解消したことも発表してはどうかという意見が大半だ。『二股』ではないと主張できれば、記事に対して名誉毀損の訴訟を起こすこともできる。しかし穂積社長がそれを固辞していてね。記事に書かれる内容については全面的に認め、君と相手の女性に対する謝罪のみに徹するお考えなんだ」
謝罪の言葉を述べてから、ゆっくりと顔を上げる。
広報部長が、やれやれと言った様子で「越川さん」と私を呼んだ。
「どうなってるんだ? 君は穂積社長と婚約を解消したんじゃなかったのか?」
「え?」
私は短く聞き返しながら、社長室のドアをしっかりと閉め、中に一歩踏み出して足を止めた。
「週刊誌の発刊は差し止めできなくてね。午前十時にマスコミ各社に向けて、穂積社長のコメントをFAX送信することになった。その草稿を練っているところなんだが……」
秘書室課長がそう言いながらソファから立ち上がり、私の方に歩み寄ってきた。
A4サイズの紙を一枚ヒラッと差し出されたから、黙って受け取る。
草稿はまだしっかりと文章が固まっていないようで、ところどころ手書きの赤字が入っている状態だ。
けれど、大枠の意味はそれだけでもわかる。
「これを機に、婚約を解消したことも発表してはどうかという意見が大半だ。『二股』ではないと主張できれば、記事に対して名誉毀損の訴訟を起こすこともできる。しかし穂積社長がそれを固辞していてね。記事に書かれる内容については全面的に認め、君と相手の女性に対する謝罪のみに徹するお考えなんだ」