熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
広報部長が丁寧に説明してくれて、私はきゅっと唇を噛んだ。
まさにマリーさんが言っていた通りだ。
優月は自分一人を悪者にすることで、穂積グループ全体と、私やマリーさんを守ろうとしているのだ。


「いいえ」


私は草稿を手にしたまま、短く答えた。


「社長に関する内容は、まったくもって事実無根です。私は社長と婚約解消してますから、社長が誰と付き合おうと、それを傍から咎められる筋合いはありません。まさに社長に対する名誉毀損です」


そう言いながら、私はソファに大股で近寄って行った。
奥に座った副社長が、顔の前で両手を組みながら、私を見上げてくる。


「越川君。君が相手の女性に暴力を振るい、怪我をさせたというのは?」


副社長は私にそう訊ねながら、秘書室長をチラッと窺い見る。


「その件については、君からも報告を受けたと聞いているが」

「はい。記事の中で事実はそれだけです。私は確かに、ホヅミ・インターナショナルUSAの社長秘書、マリーさんに怪我を負わせました」


私がきっぱりと言い切ると、男性四人が同時に深い溜め息を漏らした。


「越川さんともあろう人が……」


課長の嘆くような言葉に、私は身体の前で両手を重ねて目を伏せた。
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