熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「表情も変えずに『お前はどうなんだ』って切り返されて、試す意味もなかったなって思いました。ナイスバディの美女に慣れた優月じゃ、そりゃあ私がどう仕掛けたって、ドキッとすらしないですよね」


そう言って、肩を竦めて目を伏せる。
進藤さんは逡巡するように小さく何度か頷いた後、半分ほど手をつけたまま放置していた昼食のトレーを軽く横にどかした。


「やっぱり、優月が綾乃ちゃん以外の女と付き合ってたこと、引っかかってる?」


進藤さんはそう言って首を傾ける。


「頼まれたとは言え、君に話さない方が良かったかな?」


斜めの角度から向けられる視線に、私は自分でも少し間を置いて考えた。
そして、首を横に振った。


「知りたかったのは私です。それに冷静に考えれば、三十二歳になるまで優月が誰とも付き合ってなかったいう方が、普通信じられないでしょ。ショックより前に、やっぱりなあって納得しただけです」


自分の心中に合う言葉かどうか考えながら返事をすると、進藤さんは目を細めてフッと笑った。


「結局、優月と私じゃ、今以上にはなれないんだなって。ただ結婚するだけならそれでいいのかもしれないけど、私はそれじゃ寂しいって思うから。……婚約解消すべきだったんですよ」


どこか面白そうに目を細めている進藤さんに、私はそう言って考えを締め括った。
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