熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
顔を真っ赤にして咎めた私に、進藤さんは即座に畳みかけてきた。
またしても言われ慣れない『可愛い』という言葉にドキッとして、私は思わず口ごもってしまう。


「もちろん、優月から本気で奪えると思ってなかったけどね。でも、優月も合意して婚約解消したんなら、俺も諦める必要はないかなって思ってね」


進藤さんは涼しげな余裕の表情で、胸の前で腕組みをする。


「う、奪うって……」


どこか暴力的な響きを感じるその言葉を、自分でも繰り返す。
途端に混乱しそうになって、私はそのまま言葉をのんだ。
私はよほど戸惑った顔をしていたんだろう。
進藤さんはちょっと困ったように首を傾けて微笑んだ。


「綾乃ちゃん。俺、本気で言ってる。優月とは友達だし、ちゃんとこのことは言っておく。君は何も心配しなくていい」


さっきまで愉快気に笑っていのに、言葉を重ねるごとに、進藤さんの声には真剣味が増し、表情は真摯に変わっていく。
それを目の前で見ていたからこそ、私は困惑を隠せない。
『冗談でしょ』と笑って誤魔化すこともできない。


結局、返事に窮して黙り込んだ。
膝の上で無意識に組み合わせた両手に、視線を落とす。
それを見て、進藤さんはふうっと口をすぼめて溜め息をついた。
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