熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「どうしたの?」


自分でも声が怯んでるのを感じながら、スマホを片手にベッドの端っこに腰かけた。


『綾乃、今どこ?』


静かな声なのに、どこか急いているような空気を感じる。


「家だけど……?」


彼には見えないとわかっていて、私は部屋を見渡しながらそう答えた。
その途端、『今から会いたい』という声が聞こえて、私はギョッとして目を剥いた。


「えっ!? い、今から!?」

『すぐ話したい。都合悪いか?』


優月は淡々と、でも強引に押し切るように言葉を重ねてくる。


「ちょっと待ってよ。もう十時過ぎてるんだよ。私、お風呂入っちゃったし。明日じゃダメなの?」


断るのが常識だと思うから、私は戸惑いながらもはっきりそう答えた。
もちろん優月は非常識な人間じゃない。
私の返事を聞けば、よほど急ぎじゃない限り、明日の朝にしてくれるだろうと思った。
なのに。


『今、お前の家の前まで来てるんだ』

「えっ……」


間髪入れずに返されて、私は思わず立ち上がった。
少なくとも今まで、優月がこんなに強引に押しかけて来たことなんかない。


『上げてもらえる?』


続けて畳みかけてくる優月に戸惑いながら、私は意味もなく窓辺に駆け寄った。
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