熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
私、越川綾乃(こしかわあやの)、二十五歳。
この穂積コーポレーションに入社してすぐの頃から秘書室に所属していて、三年間社長秘書を務めている。
新卒入社の私がいきなり社長秘書……というのは、普通に考えれば前代未聞の配属だけど、これは社長である優月の命令だ。
私の家は、旧家族の血筋を引く家柄。
優月の穂積家とは、先祖代々からの繋がりがある。
とは言え、今ウチにあるのは、代々続いた家名と東京都心の一等地にある土地と屋敷だけ。
生業にしている家業もないから、父は普通にサラリーマンだし、今じゃ普通の一般家庭と大差はない。
時代の流れと共に廃れていくのを待つだけだ。
だけど、何よりも家名を大事にしていた厳格な先代、祖父の命令で、私は生まれた時から優月の『許嫁』だった。
物心ついた時には、幼い頃からそばにいた七つ年上の綺麗なお兄さんが、将来自分の旦那様になる人と認識していた。
おかげで生まれてから二十五年間、私の狭い世界に、『男』は優月しかいなかった。
高校生になっても、大学生になっても、私の世界はいつも優月が中心だった。
正直、今までそれを不思議に思ったことも、不満だったこともない。
このままなんの疑問も持たず優月と結婚すれば、私の人生は一生安泰。
何不自由のない生活が保障されている。
波風立てる必要はない。
だけど――。
私は、今まで、恋も知らない。
この穂積コーポレーションに入社してすぐの頃から秘書室に所属していて、三年間社長秘書を務めている。
新卒入社の私がいきなり社長秘書……というのは、普通に考えれば前代未聞の配属だけど、これは社長である優月の命令だ。
私の家は、旧家族の血筋を引く家柄。
優月の穂積家とは、先祖代々からの繋がりがある。
とは言え、今ウチにあるのは、代々続いた家名と東京都心の一等地にある土地と屋敷だけ。
生業にしている家業もないから、父は普通にサラリーマンだし、今じゃ普通の一般家庭と大差はない。
時代の流れと共に廃れていくのを待つだけだ。
だけど、何よりも家名を大事にしていた厳格な先代、祖父の命令で、私は生まれた時から優月の『許嫁』だった。
物心ついた時には、幼い頃からそばにいた七つ年上の綺麗なお兄さんが、将来自分の旦那様になる人と認識していた。
おかげで生まれてから二十五年間、私の狭い世界に、『男』は優月しかいなかった。
高校生になっても、大学生になっても、私の世界はいつも優月が中心だった。
正直、今までそれを不思議に思ったことも、不満だったこともない。
このままなんの疑問も持たず優月と結婚すれば、私の人生は一生安泰。
何不自由のない生活が保障されている。
波風立てる必要はない。
だけど――。
私は、今まで、恋も知らない。