熱情求婚～御曹司の庇護欲がとまらない～
その言葉の意味が心の中にストンと落ちてきて、途端に言葉で言い表せないほどの憤りを感じた。


「ひ……どいっ！　優月のバカ！　最低！！」


大声で叫びながら、私は彼の胸に両手の握り拳を強く打ちつけた。
すぐ頭上から『うっ』と唸り声が聞こえるけれど、そんなの気にしてやらない。


「怖かった！　優月、怖かった。私、心臓壊れそうだったのにっ……！！」


感情を爆発させた途端、ホッとした。
優月を詰る声に涙が混じってしまう。
声を詰まらせると同時に、彼の胸に打ちつけたまま手が止まる。


「はいはい。俺が悪かった。……怖がらせるだけじゃ、しょうがないのになあ……」


優月は子供をあやすみたいな言い方をして、私の両手首を掴んで自分の胸から離させた。
涙が止まらない私の手を、片手で一纏めに掴み直す。


「ほら、綾乃。泣かせた責任とって、胸くらい貸してやるからここで泣け」


そんな声に耳をくすぐられ、私の額は優月の胸に着地していた。
さっきまで怖くて堪らなかったのに、その温もりがとても優しくて心地よい。


優月の体温に包まれて、やっと心からホッとした。
そのせいで、涙が止まらなくなってしまう。


「ふ、えええ……」


堪えようとしたのに、声が漏れてしまった。
子供みたいで情けない私の泣き声を聞いて、優月が頭上でブブッと吹き出して笑っている。
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