熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
どうして痛むのかよくわからなくて、私は自分でも戸惑った。
だって、優月が私を『愛おしい』と言う気持ちもわかる。
それは明らかに『家族愛』に近いものだから。


「だ、だから言ったじゃない。婚約だって解消したんだし、もうそんなこと……」


優月だけにぼやかせておきたくなくて、私は彼の胸から顔を上げて言い返した。
けれど優月に「でも」と遮られる。


「誰にも、やりたくないんだよ」

「……え?」


小さな呟きを耳で拾って、私は瞬きをしながら優月の横顔を見つめた。
彼は私の視線に気付いているかいないのか、ただただ大きな溜め息を放つ。


「綾乃が俺以外の男を愛そうとするのも、嫌なんだよ」

「っ……」


絞り出すような優月の言葉に、私の胸の鼓動がドクッと音を立てて跳ね上がった。


優月がどういう意味で言っているのかわからないけど。
婚約を解消したとは言え、妹みたいな元許嫁を純粋に心配してるだけかもしれないけど。
私は優月の言葉に、『家族』に向けるには強すぎる熱情を感じた。


本当はもっと続きを聞きたかったのに、優月はそれっきり黙り込んでしまった。
なんだか胸が疼いて、優月に抱き締められているこの状況を、強く強く意識してしまう。


恥ずかしい――。
照れ臭さばかりが強まり、私はそっと優月の腕の中で身じろぎをした。
< 47 / 255 >

この作品をシェア

pagetop