熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
それが優月にも伝わったのか、彼はそっと私から腕を離した。


「……悪い。こんな夜遅くにベッドの上で抱き締めてちゃマズいな。……うん」


優月は少しおどけたような軽い調子で言って、ベッドから立ち上がった。


「綾乃。こんな時間に、強引に上がり込んだ俺が言えたことじゃないだろうけど。お前も少しは警戒しろ」


そんな言葉に導かれ、私もおずおずと顔を上げた。
優月は私に背を向けたままヒョイッと肩を竦めて、その肩越しに、ちょっとバツが悪そうな表情を見せる。


「あ……はい」


身体が離れても気恥ずかしくて、私は素直にそう返事をしていた。


「進藤さんのことは、慎重に考える。優月にもちゃんと相談するから……」

「それはありがたいけど……男に顔寄せられて、簡単に目閉じるな、バーカ」


部屋に漂ういつもと違う空気を、いつもの物に戻そうと、私は真面目な顔をして答えたのに。
優月はサラッと遮って、私の額を軽くコンと小突いた。
そんな仕草に、なぜだか私の胸がきゅんと疼く。


私の反応を確認せずに、優月はふっと顔を背けた。
そして。


「でもまあ。……そのおかげで、お前に欲情してる俺、見られずに済んだから、良かった」


拗ねたような口調でボソッと呟く優月に、鼓動がドキッと飛び跳ねた。
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