熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
場所を社長室に移して、優月は出張中の社内の報告を部下たちから受けた。
三十分ほど時間を費やし、報告をすべて終えた部下たちが退室していく。
最後の男性が恭しく頭を下げた。
彼がドアを閉めた後、私は広い社長室に優月と二人きりになった。


優月は豪華な椅子に座り、長い足を組み上げ、優雅に紅茶を飲んでいる。
彼は今、執務机の後ろの壁一面の大きな窓から、東京のオフィス街の景色を堪能している。


私は彼の執務机の前に立ち、その様子を黙って見つめ、話を切り出すタイミングを計っていた。
優月の手にあるカップが空になるのを待ち、緊張を隠して大きく息を吸う。


「社長」


そのタイミングを逃さず、短く呼びかけた。


「他人行儀な呼び方だな。仕事のことか?」


彼は目線を窓の外に向けたまま、私にそう答えた。


「お話したいことがあるんです」


彼の返事に怯まず、私はそう畳みかける。
私の改まった口調に気付いたのか、優月は床に着いた足を軸にして、クルッと椅子を回転させた。


「なに」

「来週、私の祖父の三回忌の法要があるんです」
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