熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
その向こうから、相変わらず上目遣いで私を観察している。


「そりゃあ、綾乃も二十五歳の大人だし、『酒』の約束をする友達くらいいるだろう。週末だからって羽目外したりしなければ、ディナー断られたくらいで俺の機嫌も悪くならないが」


優月は私の今夜の約束がしっかり『お酒』だと見抜き、宣言通り機嫌を悪くして鋭い瞳を向けてきた。


「普通に断れば見逃してやったものを。……相手、誰だ?」

「えっ!?」


容赦なく探られて、私の声がひっくり返った。
それがますます優月の不信を煽ってしまう。


「え、っと。……大学の時の友達」


優月の視線がまとわりつく。
私は腰が引けるのを感じながら、目を逸らした。
けれど優月はニッコリと魅惑的に……いや、意地悪に微笑む。


「嘘つけ。お前、根が純真なだけに、嘘つくの壊滅的に下手なんだよ。しかも、俺に隠そうとして気負ったんだろうが、あっさりボロ出しやがって」

「う、嘘なんか」

「約束の相手。進藤だろ?」

「っ……」


崖っぷちに追い詰められながら足掻こうとした私に、優月はあっさりとどめを刺す。
息をのむ反応を見せてしまったせいで、私の敗北は決定的となった。
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