熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「紅茶。淹れてくれるんじゃなかったっけ?」

「っ……あ、そ、そうでした!」


疲れている優月の為に、自分からそう言ったくせにすっかり忘れてしまっていた。
私はポンと手を打ってから、慌ててしっかりと立ち上がる。


小走りでドアに向かい、レバーに手をかけながら、一度ゆっくり振り返った。
私の視線を感じたのか、優月がふっと目線を上に向ける。


「何? 綾乃」

「ダージリンにするね。オータムナルのいい茶葉頂いたの。ミルクティーにしても美味しいから」


出張帰りや疲れている時、優月はいつもミルクティーを好んで飲む。
先週末、父が仕事の取引先から頂いてきた紅茶がぴったりなのを思い出してそう告げると、優月はほんの少し目を丸くしてから、クスッと肩を竦めて笑った。


「綾乃のセレクトなら、俺の好みからも外れない。任せるよ」

「はい」


優月の言葉から確かな信頼を感じて、気持ちが高揚する。
私は一度ペコッと頭を下げ、社長室を出た。


昔から知り過ぎているせいで、私たちは婚約を解消した。
昔から知り過ぎているからこそ、優月の嗜好も好みも手に取るようにわかる。


優月は、これからも関わり方を変えるつもりはないと言ってくれる。
こうやって、私らしく役に立てることが、ただただ嬉しいと思った。
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