熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
昔馴染みの進藤さんと私の前だからか、優月の反応は仕事中とは比べ物にならないくらい子供だ。
そんな優月を見ても、私も進藤さんも苦笑するだけ。
良く知った仲だからこその砕けた空気は、居心地よくてちょっと安心する。


「飲み物頼もうか。優月、生でいいだろ? 綾乃ちゃんは?」


店員さんを呼ぶボタンは進藤さんが背にした壁にある。
それを見て、私はメニューを開くことなく「同じ物を」と答えた。
ファーストオーダーを終えると、座ったきり黙っている優月に、進藤さんが肩を揺すって笑いながら声をかける。


「何? 優月。庶民的な居酒屋で、不満か?」


茶化すように言われて、優月は進藤さんをキッと睨む。


「それとも、綾乃ちゃんをこんなところにしか連れて来れないのか、って怒ってる?」

「別に。進藤は綾乃の恋人じゃないんだから。今から無理する必要ないだろ」

「……優月ってば」


突っかかって失礼な言い方をする優月を咎めるつもりで、私は彼のスーツの上着をちょいっと引っ張った。
私の指に視線を落とし、優月は一度大きく深呼吸をしてから、しっかりと進藤さんに向き合う。


「進藤。この間も言ったけど、俺は本心では、婚約解消に納得していない」

「えっ……?」


優月が静かに進藤さんに向けた言葉に、私が先に反応した。
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