熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「優月っ? い、痛い。乱暴だよっ……」


手を捕まえて抗議したのに、優月はやめてくれない。
咎めるつもりで睨みつけた途端、優月の手が止まった。
それでも私の唇を手で塞いだまま、目の前でがっくりとこうべを垂れる。


「……綾乃、ごめん」


小さな小さな消え入るような謝罪を聞いて、私は何度も瞬きをした。
優月はセットの乱れた前髪を掻き上げ、大きくはあっと声に出して息を吐く。


「こうなることを恐れてわざわざ邪魔したのに、最後の最後で油断した」

「え?」

「……ちくしょう」


顔を伏せたまま優月が発した掠れた声が、私の思考回路を再び活性化させる。
そのせいで、ついさっき自分の身に起きた出来事が、今になってクリアに蘇った。


「っ……」


優月の呟きに導かれ、進藤さんとキスしてしまったことを思い出す。
思わず息をのんだ気配が伝わったのか、優月は私から手を離し、ゆっくりと顔を上げた。


彼の視線を唇に感じて、私は反射的に指を当てて隠した。
優月が目の前で眉を寄せる。
私はそっと目を伏せた。


「わ、私……」

「綾乃、進藤にされたことは忘れろ。あんなのただの事故だ。躾の悪い犬に舐められたとでも思え。……あんなの。キスじゃない」
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