熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
呼びかけながら伸ばした手を、私は宙でピタリと止めた。
優月が何を思って言葉を止めたのかわからないけど、再び私に視線の照準を合わせた彼に戸惑う。


「優月?」


さっきまで傷付いているように見えた優月の瞳が、何かを葛藤するように揺れている。
それが何か、私が見つけられずにいる間に、優月が瞳に力を込めた。


「これ以上は絶対に奪わせない」


短い言葉にも力が漲っていて、私の胸がドキッと跳ねた。


「う、奪う……?」


前に進藤さんの口から聞いた時にも、その暴力的な響きに怯んだ。
それを今、私は優月からも聞いている。


優月は私が聞き返したことは無視して、中途半端に宙で止まった私の手をギュッと掴み、指を絡めるようにして組み合わせる。


「……奪われたものも、奪い返す。いいか、綾乃。お前の初めてのキスの相手は進藤じゃない」


優月は物騒に聞こえる言葉を言い捨てながら、繋いでいる手に力を込めた。
組み合わさったままの手を引っ張られ、私の身体も前に引き寄せられる。


「ゆづ……」


驚いて大きく見開いた私の瞳に、優月の唇が映り込んだ。


「俺だ。綾乃」


そういう形に動くのを見たのが、最後――。


優月の唇が、私の唇に重なった。
さっき進藤さんと掠めるように触れた時とは全然違い、確かな質感を持って強く押し当てられる。
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