熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
優月の体温が、唇から浸透するみたいだ。


それを感じて、私は無意識に息をのんだ。
咄嗟に背を仰け反らせて逃げようとすると、優月はもう片方の腕を私の肩に回した。
強引に抱き寄せながら、自分からも私との隙間を埋めてくる。


優月の唇が、私の唇の上で小さく動く。
重ねて押し当てるだけのキスに動きが加わり、下唇を食まれているのがわかる。
強引に与えられる感触はとてもリアルで、進藤さんの唇の淡い不確かな感覚は薄れていく。
甘い甘い感触に吸い込まれそうで、私は思わず目を閉じた。


『奪い返す』。
優月が宣言したように、私のファーストキスの記憶を、自分で上書きしようとしてるみたいだ。
何度も角度を変えて触れ合わせ、優月は私の唇を離そうとしない。


目を閉じていると、彼の唇以外の物が意識から遮断されていく。
のまれていく――。
そんな感覚に、私はブルッと身体を震わせた。
そうしてみると、通りの人の足音が再びはっきりと聞こえてきて、私はハッと目を開けた。


「優月っ……ひ、人が見てるっ……!」


必死の思いで掠れた声をあげ、私は優月の胸を両手で強く押しのけた。
唇が離れ、私の身体を包み込んでいた生温かい熱も遠のく。
長いキスから解放されてホッとしながら、私は反射的に両手で唇を覆い隠した。
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