熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
そこまでの私の一連の行動が怪しかったのか、私を呼ぶ優月の声もどこか訝し気だ。


「な、なんでもない」


心臓がフル稼働しているせいか、顔が熱い。
きっと耳まで真っ赤になっているだろう。
それを優月に気付かれたくなくて、私はしっかりとデスクの正面に身体を向けて、顔を俯けた。


そのタイミングで、メールソフトが起動した。
金曜日に退社してから、つい今までに届いた未開封のメールが、いくつか表示されている。
そこに早速、リスケが必要な件名を見つけた。
会話を切り上げる口実にできることにホッとしながら、私は右手でマウスを操作した。


「ご、ごめんなさい。私、朝一番の予定変更の対応しないと」


モニターを見つめたままそれだけ言うと、私の視界の端で優月はひょいっと肩を竦め、軽く頭を掻きながら自分の執務机に戻っていく。
彼の気配が遠のいていくのを肌で感じてようやく安堵して、私はリスケ対応に集中した。


優月のスケジュール管理には、いつも細心の注意を図る。
年末近くなると分刻みのスケジュールになるし、ほんの少しでも時間が被ったりしたら、先方との信頼関係の悪化に繋がってしまう。
私の管理ミスは、優月の……穂積グループ全体の信用に直結する。
だから、それほど難しくないリスケでも、無事終了した時は、いつも肩の荷が軽くなったような気がして安心する。
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