熱情求婚~御曹司の庇護欲がとまらない~
「ざ、罪悪感?」


彼の混乱に引き摺り込まれるのを感じながら、私はその言葉尻を拾って聞き返した。
「そう」と、優月が短く頷く。


「……後悔してるってこと?」


私なりに優月の心中を読み解いて、思いついた考えを口にした。


「私にキスなんかしなきゃ良かったって」


言った途端自分で傷付いて、気持ちがズンと沈んでいく。
優月から目を逸らして大きく俯き、自分の靴の爪先に目線を落とした。
そんな私に慌てたように、「違う!」と叫びながら優月が顔を上げた。


「そうじゃない。そうじゃないんだ、綾乃。ああ~~……この際だ、恥を忍んで言うが、今までもしたい気持ちはあった。進藤の言うように理性総動員して……意識してセーブしていただけ」

「えっ!?」

「……聖域なんだよ。お前は俺にとって」


信じ難いことを言われ、私は聞き返しながら大きく顔を上げてしまう。


「絶対的な不可侵領域。進藤も言っていたが、年の差も理由にして、俺は綾乃を女として意識しないようにしてた。……絶対、手を触れないように」


胸の鼓動もドキドキと勢いよく加速し始め、頬が火照って赤くなっているのが自分でもわかる。
私を見下ろす優月の頬も赤く染まっていて、私たちはお互いに目を逸らして無言になった。


妙にくすぐったい沈黙を破るかのように、『チン』と呑気な電子音が狭い箱の中に響いた。
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