父と息子

母のお葬式

＊過去の記憶＊

母さんが亡くなったのは、雨が毎日降っている梅雨の季節だった。

「まだ、優太くん小さいのにね〜。」

「祐介さん（父）大変になるわね。」

なにも言わずに黙っている親子に人知れず話している親戚の人たち。

「ごめんね。優太くん。
こんな話ししても優太くんはわからないもんね。」

親戚のおばさんが言うが、子供の僕にだって内容は理解できる。

けど、僕は 今は泣くことしかできなかった。

大好きな大好きな母さん。
優しくて、強くて、美しい
花のような母さん。

僕とお父さんをおいて行ってしまった。


お葬式の間みんな泣いていた。
けれど、一人だけ泣いていない人がいた。

それは、お父さんだった。
ただ、ずっとお母さんの棺桶をまっすぐ見て黙っているだけだった。

「祐介さん。
泣いていらっしゃらないわね。」

「結婚式の時も笑っていらっしゃらなかったもの、正直言って全然表情読み取れなくて怖いわ。

容姿だけはいいのにね。」

お父さんだけは、最後まで泣かなかった。
母さんが、病院で亡くなった時も泣いていなかった。

ただ、無表情だった。

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