月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「………」
桃子は口を開かず、軽く頭を上下させた。
「――桃子!」
襖を吹っ飛ばす勢いで、冬芽がやってきた。
桃子のところまで突き進む。
桃子は、座ったまま冬芽を見上げる。即座に膝を折る冬芽。
「桃子……行って、しまうのか?」
冬芽の切なげな響きに、桃子の表情は揺れた。
何かを言おうとしたのか薄く口を開いたが、すぐに閉じた。
「行かないでくれ」
冬芽は、強い響きで迫る。
「行かないで、ここで俺の妻になってほしい」