月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
そのまま、桃子を鬼の屋敷から連れ出した。
桃子から望んでここからいなくなることを、鬼の一族がどう考えるかは千差万別だ。
桃子を害しようとするものがいないとは言い切れない。
霊体の桃子を連れて、御門別邸まで連れて来た。
「白……」
「一日くらい預かれる。一応、護りもこちらの方が堅固(けんご)だろう」
桃子を別邸に入れることを渋る黒を説得して、一緒に送ってくれたには礼を言った。
あまり強くない妖異――霊体を陰陽師の結界の中に入れるのは、消滅の危険性がある。
だが、桃子は神宮の娘であるために霊力は強い。
くわえて、庵で暮らしている黒のところへ押し付けるのも気が引けた。
「明日、また来てくれ」
「うん。必ず来るから、それまでに一人で行動を起こすなよ?」
なんだか年上ぶったことを言う黒――年上だけど――がおかしくて、思わず笑ってしまった。
「また明日。よろしくな」
黒を見送って、桃子を別邸に入れる。