月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】


相変わらず桃子は喋らない。


天音から、もう家人も百合姫も眠りについていると伝えられているから、家の誰にも逢わせない方がいいだろう。


明日も早い時間に黒にきてもらうことにしてある。


「不安か? 桃子」
 

俺の私室に連れてくると、桃子は落ち着きなさそうにしている。


まあ、いきなりくつろげという方が無理だろう。


「大丈夫だ。俺たちは約束を違(たが)えない。桃子が逢いたがってる者たちに必ず逢わせる。――そのあとを決めるのは貴女自身であることは、忘れないでおいてほしい」
 

桃子は軽く顎を引いたが、肯きはしなかった。
 

家人や百合姫に接触させたくないので、桃子を私室に置いて、俺は夜通し調べ物をすることにした。
 

今日も無炎は縁側に片足を伸ばして座って、外を眺めている。
 

そのうち桃子は、ふっと糸が切れたように壁にもたれて眠っていた。

< 55 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop