月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
相変わらず桃子は喋らない。
天音から、もう家人も百合姫も眠りについていると伝えられているから、家の誰にも逢わせない方がいいだろう。
明日も早い時間に黒にきてもらうことにしてある。
「不安か? 桃子」
俺の私室に連れてくると、桃子は落ち着きなさそうにしている。
まあ、いきなりくつろげという方が無理だろう。
「大丈夫だ。俺たちは約束を違(たが)えない。桃子が逢いたがってる者たちに必ず逢わせる。――そのあとを決めるのは貴女自身であることは、忘れないでおいてほしい」
桃子は軽く顎を引いたが、肯きはしなかった。
家人や百合姫に接触させたくないので、桃子を私室に置いて、俺は夜通し調べ物をすることにした。
今日も無炎は縁側に片足を伸ばして座って、外を眺めている。
そのうち桃子は、ふっと糸が切れたように壁にもたれて眠っていた。