月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
2 闇の陰陽師・黒藤
「……俺の方に来ましたか」
瞼をあげると、白に染まった世界に一人の黒髪の女性がたたずんでいた。
ここは俺の夢世界――桃子をおくった日の夜、俺の夢に桃子は出て来た。
「貴方だけが総てを知っているように思いまして。……彼女は気づいていませんね?」
「貴女の方は勘付いていましたか」
白が本当は女性であると、桃子は知っていたか。
「黒藤さんが、女性扱いしかしていませんでしたから」
「俺、蹴られて殴られてしかいませんが」
まあ俺の身体が常人よりは丈夫なこともあるが、白は手加減ない。
「……生前――『華取桃子』になる前の記憶も還(かえ)ってきたようですね」
桃子は、微笑み首をかたむけた。