月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
陰陽師が陰と陽の中立を保つ存在なら、神祇は高天原(たかまがはら)と呼ばれる世界と、俺たちのいる現世と、黄泉(よみ)と呼ばれる死者の世界が、お互い干渉し過ぎないようにバランスを保つ役目を負っている。
司家を総主家に、その下に多くの神祇家が存在する。
なかでも神宮と古桜(こざくら)、御影(みかげ)は『神祇三家』と呼ばれ、司家に次ぐ高位の格として扱われている。
……神宮は滅びた。桃子は、最後の神宮だ。
「貴女は、少しは鍛錬を?」
「一応程度ですよ。これは、在義さんは知りません。在義さんと出逢ったときのわたしはこれを忘れていましたから」
これ、と桃子は球体を浮かべた右手を見る。
神祇の家系としての能力(ちから)。
「では、娘さんに発現することはなさそうですね」