月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「どうしました? 新しいこと、思い出しました?」
「いえ、心配事というか……」
「なんです?」
「あの子は……本家からは遠いですが、神宮の一です。そこに、実質最後の神宮を名乗れる咲桜と結婚しては、問題は起こらないでしょうか? その、力的にまずい、とか……」
『最後の神宮』は、娘とするか……。
「そういうことはないと思いますよ。神宮流夜の霊力は一般人程度で、質もそれと変わりありません。神祇として目覚めることはない。
咲桜の方は貴女の娘であるからある程度の能力(ちから)はあるでしょうが、何の鍛錬もなく操れたら神祇家がいる意味がない。咲桜に力の開眼はない。――いや、させない。
神宮は滅んだ一族。司もそう判断している。それに則(のっと)って、俺たちが貴女以降に神宮の能力を発言させない」
――簡単な言い方をすれば、もし咲桜や流夜、それ以降の神宮に能力の発現が認められそうな場合は、俺たちが力を封じる。
力を秘めただけの存在と、力を持ってそれを扱えるように訓練している者とでは、雲泥の差がある。
「……安心、しました」