月華の陰陽師1ー朧咲夜、裏の真相ー【完】
「なんっなんだあいつは!」
「いやー、全然変わってないだけじゃない。むしろ安心じゃない?」
「どこが安心か! 百合姫はなんでそんなに落ち着いてる!」
憤慨する俺の隣では、百合姫が平然とスマホをいじっている。
「だって白桜が黒藤にキスされてるのなんてよくあることだし。初めてじゃないんだから」
「頼むから否定してくれ! 俺、男で通ってるんだから!」
黒藤を沈めてそのまま放置した俺と百合姫は、中庭の一角の四阿(あずまや)にいた。
ここ斎陵学園(せいりょうがくえん)は、旧い家柄の生徒が多い。
といっても、今は普通の家だけど、血筋的に昔は色々と役職についていた、というような感じだ。
昔から支援的に困っていない学園は広く、校庭はもはや庭園の勢いだ。
隠れて話をする場所は多いが、盗み聞きの危険性もまた、ある。
「なんだ、また黒坊(くろぼう)に口づけられたのか?」
そう言って四阿に入って来たのは、俺と同じ斎陵学園の男子の制服を着た奴。
黒藤のことを『黒坊』と呼んでいる。