樫の木の恋(中)
いち
「半兵衛!起きろ半兵衛!」
「ん…どう…されたんですか秀吉殿…?」
可愛い秀吉殿の顔が目の前に見える。秀吉殿はひどく焦った顔をしていた。
結局昨日というより、今日の朝、陽が出てきた頃に二人で抱き締めあいながら眠りについた。
体の関係を持ったあと、長い間二人で話していた。嫌な事も良い事もなんでも話したのだ。
さすがに眠くなり評定の時間まで寝ようと寝たのだった。
「半兵衛!もう評定が始まっておる!」
それを聞いて水をかけられたかのように飛び起きた。大事な評定を遅刻したとあっては、どんな罰を受けてしまうことか。
急いで二人とも袴に着替えて、髪を結い布団も畳むことなく部屋を急いで飛び出した。
「まずい、さすがにまずい。」
ほとんど走るように大広間へと向かっている間、秀吉殿がとりつかれたかのように呟く。
それほど遅刻というものは重いのだ。
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