樫の木の恋(中)
「それにしてもマムシの教えとは、なんなのじゃろう?分かるか半兵衛。」
マムシ……。
マムシとは斎藤道三殿の通り名だ。
マムシのようにしつこいお方、という意味が込められている。
自分に聞いたのは、元々斎藤家に仕えていた身だからだろう。
明智殿は朝倉家に何年も仕えていた方だが、その前は斎藤家に仕えていたのだ。
自分とは仕えていた時期が違うため面識は無いが。
「しつこいという意味では?」
「なるほどな…。いずれにしろ面倒になりそうだ。」
この時明智殿の言った意味を履き違えてしまった。
それが後々織田家の命運をも左右することにはなろうとは
誰も思わなかった。