樫の木の恋(中)
「お主ら、わしの話をしておったなぁ?」
にこやかに笑う秀吉殿。
このお方は先程まで物足りなそうに見ていたのに、強がっている。
「抱いてみたいとか聞こえたんだが?」
「い、いえそんな!滅相もない!」
二人は焦ったように手を振り否定する。
秀吉殿はふっと笑って部屋へと向かっていった。
「手、出すなよ?」
二人に笑いかけ、釘を刺してから秀吉殿の後を追った。
いつもはお互い違う部屋だが、今日は小谷城で一泊するにあたって他の家臣達もいるから、部屋がそんなに余っていない。
二人は同じ部屋で寝ることになっていた。
だから同じ部屋に入ると、既に小姓が引いてくれていた布団が目につく。
さて、どうしようかな?
秀吉殿は清正と正則の前では毅然とした態度でいたが、恐らくまだうずいているだろう。
その証拠に部屋に入ってすぐに顔を赤くしているのだから。
「あ、あの、半兵衛…。」
「どうされました?」
「いや…そのぉ。」
このお方は二つ人格があるのではないかと思ってしまうほど、先程とはうってかわって恥ずかしそうにしている。