樫の木の恋(中)
なな
いやはや、なんというか。
恐れ入ったというか。
小谷城を出発し、敦賀城で一泊した軍は二手に分かれ、越前一向一揆を倒しに出発した。
まず秀吉殿と明智殿の隊が攻撃してきた一向一揆の軍を叩き潰し、彼らの居城に火を放った。
そしてその日のうちに府中竜門寺を大殿が率いる軍が夜襲をかけ、それに驚いた一揆勢が猛然と府中に逃げたのだが、待ち受けていた秀吉殿と明智殿の軍に簡単に叩きのめされたのだった。
そして更に叩きのめすために府中竜門寺に布陣していた。
「敵方の朝倉景建が家臣三人を引き連れ、大殿に合わせてほしいと申しております!」
大殿は一言通せと厳しい顔をしながら言った。
此度の戦、越前一向一揆をが分裂している好機に徹底的に叩き潰すために織田家の重鎮達が勢揃いしていた。
そんな中に朝倉景建と三人の家臣は連れてこられた。
まず大殿の鋭い眼光に恐れ、目をそらすと柴田殿が殺すとばかりに目を向けている。そしてそんな中、秀吉殿も笑みを浮かべてはいるものの、その雰囲気に朝倉景建は完全に尻込みしていた。
「して、何のようじゃ?」
大殿の低い第一声に肩を跳ね上げる景建。
「そ、その!下間頼俊、下間頼照などの首を持参して参りましたっ。なので、どうかそれがし達の命だけは…!」
降伏は降伏でも、質の悪い降伏のほうだったようだ。