樫の木の恋(中)


越前一向一揆を倒し、再び小谷城で一泊することになった。怪我人も少なく、明日には大殿が兵を引き連れ岐阜城に戻るとのこと。
我らは明日には長浜城に戻る予定だった。

「柴田殿がお話があるから来てくれと申しておりました。」

不意に小姓に告げられ、柴田殿の元へと二人で向かっていた。

「何の話だと思う?」

「さぁ。大殿との事でしょうか?」

秀吉殿はにやっと不適に笑う。

「大方そんなところじゃろう。大殿とわしが男女の関係なのかと疑っているのじゃろうな。まぁただ単にわしが目を掛けられてるのを僻んでおるのだろうけど。」

大殿は自らが死んだ後を秀吉殿に頼むくらい信頼がある。自然と目を掛けてしまうのは仕方のないこと。
最近は大殿もそれを隠そうとしていない。

それが筆頭家老である柴田殿の怒りを買っているのだろうな。
それに女だと秀吉殿が明かしてから二人が話しているところを見たことがない。
あまり良く思っていないのは確かだ。



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