樫の木の恋(中)
「余にもマムシの教えが流れている、と言っておられました。」
「マムシの教え、のぉ。しつこいという事じゃろうか。」
「そこまでは分かりません。」
大殿でも明智殿の言った意味は分からなかった。
秀吉殿は口を挟まず、黙々と酒を飲んでいた。彼女の頭の中にはあの明智殿の不気味な笑みが浮かんでいる。そんな気がしていた。
「まぁ、よい。飲め半兵衛。秀吉、お前は飲みすぎるなよ?」
「な、何故です?」
いきなり話を振られた上に、飲みすぎるなとまで言われた秀吉殿は少し驚き不思議そうにしている。
「お主はあまり酒が強く無いからのぉ。」
「そんなこと…なくもありませんが…。」
口ごもる秀吉殿。そういえば今まで秀吉殿が酒をたくさん飲んでいるのを見たことがない。
今日は明智殿の件があったためか、いつもより飲んでいるのだった。
「何かあったのですか?」
大殿にそういわれるということは、前に酔ってなにかしら秀吉殿がしでかしたのだろうと思い質問をする。
すると秀吉殿は何にもないと話を終わらせようとするが、大殿がそれをさせなかった。