樫の木の恋(中)


「出来ました。」

そう言って女中達が秀吉殿が着替え終わったと告げに来た。
すっと女中が出ていってから、秀吉殿は入ってきた。綺麗な着物を身に纏い、しずしずと入ってくる。

「うぅ…恥ずかしいんじゃが。」

そう言う秀吉殿は顔を赤く染めながら、それがしの隣にそそくさと座る。もう完全に女の秀吉殿で、男の時の秀吉殿は影も形も見えない。

「いやぁ、やはり可愛らしい!」

そう言うと秀吉殿はそれがしの腕に隠れ気味になる。そんな可愛らしい秀吉殿などほとんど初めてだ。

「うぅ…嫌じゃ。」

「殿、竹中殿の後ろに隠れては見えませんよ。せっかくそんなに可愛らしい格好なのですから。」

三成がにやにやと声をかける。

「黙れ三成!そんなに面白がりおって!後で覚えていろよ!」

そう叫ぶ秀吉殿は全く怖くなどなくて、強がっているようにしか見えない。

髪も下ろし、綺麗な着物に身を包んでいる。そんな秀吉殿は凄く可愛らしい。
抱き締めたいのにな、と心の中で思ってしまう。


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