樫の木の恋(中)
恥ずかしさが極まったのか、秀吉殿はいきなり酒をとる。
「半兵衛ぇ。酒!」
「ちょっ!秀吉殿もう駄目です!」
「うるしゃい!お主はいつも私の心配ばかりしおってぇ!半兵衛は私の親か!」
とっくりごと秀吉殿はお酒を飲んでしまい、懸命にそれを奪おうとするが秀吉殿は全て飲んでしまい、とっくりの入り口を下に向け無いと言う。
「秀吉殿!飲み過ぎです!体壊しますよ?」
「ふんっ!私が酒で死にゅもんかぁ!」
ああ、駄目だ。
秀吉殿が作り上げてきた、冷徹で厳しい人の印象が恐らく皆の中で、がらがら音を立てて崩れ落ちてしまってるな。
もう実力行使と思い、秀吉殿を捕まえて布団のある部屋に連れていこう。
秀吉殿を捕まえようとすると、酔っていてもすばやい秀吉殿はさっと逃げてしまった。
「秀吉殿、逃げないで下され!もう寝ましょう!」
「嫌じゃ!半兵衛の言いなりににゃど、にゃるもんかぁ!」
そう言って清正の元へと行き、清正の後ろに隠れる秀吉殿。
「清正!秀吉殿を捕まえろ。」
「えっ!そ、それがしがですか?」
いきなり飛び火された清正は、後ろにぴたりとつく秀吉殿の様子を伺う。
「清正ぁ。私を裏切りゅのかぁ?私よりも半兵衛を取りゅんかぁ?」
酔いながらも、有無を言わせぬ秀吉殿の雰囲気に清正は心底困った様子だった。それがしは清正を諦め、自ら捕まえようと動く。