樫の木の恋(中)
捕まえようとすると、秀吉殿はするりと清正の周りを回る。
「鬼畜!変態!助平!女たらし!」
「なっ!女たらしと言われる筋合いはありませんよ!」
「じゃあ、他は認めりゅんじゃなぁ?」
清正の後ろでにやにやとする秀吉殿は、悪態をついて困らせてくる。
「それがしがいつそのように言われるような事しましたっ?」
言葉が終わるときに、不意討ちで秀吉殿の腕を捕まえようとすると。しかし秀吉殿は余裕の表情で、それがしの手を紙一重で交わし今度は三成の後ろへと行ってしまった。
こんなときまで身のこなしが軽くなくていいのに。
「よく私を苛めるではにゃいかぁっ!三成ぃ、半兵衛が怖いにゃ。」
三成の腕に引っ付き、しかも少し走ったせいか着物が乱れている秀吉殿は首元が少し開いていて色っぽい。
「竹中殿、殿をあまり苛めないでください。ところで、どう苛められたのです?殿。」
「えーっろねぇ。……う………。」
秀吉殿は何を思い浮かべたのか分からないが、顔を真っ赤に染め上げ俯いてしまった。
「おや?どうされたのです?殿。そんなに竹中殿に助平で過激な事をされたのですか?」
「なっ!そんなわけないだろ!三成、適当な事を言うな!」
反論すると三成はまたにやにやと笑う。というか、三成の隣にいた官兵衛など、にやにやどころか、腹を抱えて笑い転げている。
「珍しいですねぇ。竹中殿が取り乱して、大声を出すなど。いったいどんなことを殿にしたのか、知りたくなりますねぇ。」
「別に…そんな変な事はしておらん。」