樫の木の恋(中)


「嘘つきぃ!」

俯いていた秀吉殿が、赤い顔そのままに反論してくる。
呂律が本当に回っていなくて、それが子供っぽく見せて可愛い。
しかしとりあえず捕まえねば。

「この間らって!小谷城れ…!」

「小谷城で何をされたんです?」

「誰が来りゅやもしれん所で…」

「ひ、秀吉殿!?」

酔ってなければこんな話絶対しないのに!
酔っていると本当に厄介なお方だなと思わされる。

慌てて捕まえようとすると、三成が邪魔をする。

「そんな誰が来るやも知れない所で、助平な事をされたのですか?」

小さく恥ずかしそうに頷く秀吉殿は、更に口を開く。

「しかも人が通る時にぃ、仕置きとか言って声を我慢させりゅの。」

被害者なんだと言わんばかりに、秀吉殿が三成の着物の裾を掴みながら可愛く訴える。

「うわー鬼畜!そんなこと言われたのですか?殿に?」

三成は秀吉殿をそれがしから庇いながら、引いた顔をする。しかし、内心面白がっているのがだだ漏れだ。

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