樫の木の恋(中)
「もう寝ましょう?」
そう問いかけると、秀吉殿は不服さを訴えるかのように口を前に出す。
「まだ眠くにゃい。」
秀吉殿はするりとそれがしの膝に乗り、それからまた酒を飲む。
仕方がないので、先程の三成のように覆い被さるように、秀吉殿に抱きつき酒を取り上げる。
「もう駄目です。」
「やらっ!ちょうだいっ!」
「…あまり言うこと聞かないと、皆の前で口付けしますよ?」
秀吉殿の耳元に顔をつけ、くすぐったくなるように言う。秀吉殿はびくっとしてながら、顔を染める。
「では、寝ましょうね?」
膝の上から秀吉殿をおろし、それから秀吉殿を抱き上げる。すると、秀吉殿はばたばたと暴れる。
「は、半兵衛!何をすりゅ!」
「暴れると口付けしてしまいますよ?」
大人しくなった秀吉殿を抱え、官兵衛に冷やかされながら部屋の入り口に向かう。
襖を足で開けながら、振り返り皆に声かける。
「まだ飲んでいても構わんが、あまり飲み過ぎるなよ。それと秀吉殿の部屋には来るなよ。…邪魔だから。」
「ぶはっ!邪魔って、秀吉殿に助平な事をするんだろー!羨ましー!」
そんな官兵衛の声を後ろに聞きながら、部屋を出る。秀吉殿は恥ずかしそうにそれがしの首に抱きつき、顔を隠している。