樫の木の恋(中)


此度の戦は、総大将に柴田殿を構え、秀吉殿、丹羽殿、佐々殿、滝川殿など、その他にも沢山の方が参加していた。

此度の戦に大殿も明智殿も来ない。
それを聞いて、少し不安を覚えた。

なんせ柴田殿と秀吉殿の仲がこの間の件であまり関係は良くなかった。
その二人を諫められる立場の大殿はいないし、明智殿なら二人を纏められるやもしれないが、柴田殿と秀吉殿は織田家でも力があるので、丹羽殿などでは二人を止められないだろう。

ましてや、秀吉殿の事を良く思っていない滝川殿や佐々殿までいる。

織田家は今基本的に三つに別れている。

大殿が掲げる天下布武を実行し、上杉家牽制のために柴田殿は北ノ庄城の城主になっていた。

一つ目はその柴田殿の派閥。
最も古い織田家の家臣として慕われている。
主に滝川殿や佐々殿などがいる。

そして、二つ目は秀吉殿の派閥。
丹羽殿や池田殿など、古参の方々が秀吉殿の派閥にいる。主に大殿が亡き後、織田家を秀吉殿に託そうとしている大殿の意向を感じている人がいる。

三つ目は明智殿のように上記の二つに属さない人々。

明智殿はなんだかんだ秀吉殿についたりしてくれているが。

とりあえず今、柴田殿と秀吉殿の仲が悪いのにも関わらず上杉家とぶつかるのは良くないような気がしていた。


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