樫の木の恋(中)



「よぉ、半兵衛。」

いきなり徳川殿が酒を持って隣に座った。
岡崎城にて、織田家と徳川家の重臣のみで開かれた宴、もとい祝勝会。

無礼講とは言ったものの、一国の大名がわざわざ近寄って来てくれるなど珍しい。
しかし徳川殿の話は秀吉殿以外に無いのだ。

「秀吉と仲良くやっておるようだな。」

「ええ、まぁ。」

「秀吉とお主の案で、此度の戦はたいした被害もなく終われた。本当に助かった。」

「それがしは秀吉殿の案に、付け足しただけですから。」

そういうと徳川殿はちらっと秀吉殿を見て、ふっと笑う。
秀吉殿はやはり人たらしというか、女と明かしてすぐのうちは皆遠目から秀吉殿を見ていた。

しかし前のようには行かなくとも、明かす前と変わりなく重臣達は接している。
それはきっと大殿の対応と、秀吉殿の人の良さのお陰だろう。

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